spiral1.jpg       日本スパイラル株式会社
       代表取締役 冨澤 博樹
 
|日本スパイラル株式会社について 
  日本スパイラル株式会社は、豊富な知識、経験と確かな技術により信頼性の高い製品を提供し続けている、スクリューコンベアーメーカーです。
 「スクリューコンベアー」と聞いてもあまりピンと来ないかも知れません。ほとんどのスクリューは機械の内側で活躍するため、目に触れるチャンスはなかなかありません。しかし、粉体や粒体の移動がある場合、そこには高い確率でスクリューコンベアーが存在します。小麦や大豆のような食料品、セメント、化学薬品、下水処理場の汚泥等、搬送に使われる用途は多岐に渡ります。
 創業以来、スクリュー一筋に40年以上。お客様の満足が得られる製品をご提供できるよう、全てオーダーメイドでお受けし、社員一丸となって日々スクリューの研究、品質向上に取り組んでいます。

|ものづくりの原点-春日部高等技術専門校での日々- 
 大学を卒業後、行政書士事務所の勤務などを経て、ものづくりの世界へ飛び込んだのは7年程前。結婚を機に、妻の父親が創業した当社に入社する事を決めたのがきっかけです。まずは、ものづくりの基礎を1から学ぼうと埼玉県立春日部高等技術専門校 (以下、春日部校)の金属加工科へ入校しました。高校を卒業したての若者たちと机を並べて勉強し、作業服に着替えての実習。28歳の身にはとても新鮮で、彼らと共に学んだ日々は、まるで学生時代に戻ったような、そんな楽しい日々でした。いわゆる「学校の卒業式」で涙を流したのなんて、人生で初めてだったと思います。
 1年間の訓練の後、春日部校での経験が仕事の随所に活きていることを実感しながら、先代社長と二人三脚で当社の営業に奔走しています。当社の製品は、どのようなサイズにもお応えし、全てオーダーメイドでお作りしていますが、ものづくりをする感覚を春日部校で身につけることができたおかげで、取引先からのオーダーに対して、納期や金額の提示がスムーズに行えています。また、的外れな質問をして経験豊富なベテラン職人から呆れられるような事も「あまり」ありません(笑)。

|経営者となって
 入社から7年の月日が経った今年8月、先代からバトンを引き継ぐ形で代表取締役に就任しました。経営者の立場となり、改めて感じた事があります。
 それは、社員の方達がいるからこそ、自分は生かしてもらえるのだという事です。
中でも、納期を間に合わせるために夜遅くまで残業している姿を見ると、その思いはより一層強くなります。
 経営者のこんな気持ちは、前の職場で一人の社員として働いていた頃には想像すらしなかった事です。おそらくその時の社長さんも、そして日本の多くの社長さん達も、同じような思いを抱いているのではないでしょうか。

 当社では、月に一度「教育訓練」と言って、社員同士が切磋琢磨する機会を設けています。私も、この機会に話をさせてもらうことがあります。当社の職人は、長年の経験から培った確かな技術がありますが、そこに新しい手法を加えることで、その技術に更に磨きがかけられると思っています。仕事現場の本番で使えるものにするには、まだ時間を要しますが、こうした機会を通じて私の考え方を伝えるようにもしています。

|これから社会に出る学生のみなさんへ
 中小企業で働くことの魅力の一つは、一人ひとりの存在意義が強いことです。その人がいるかいないかで、会社の運命が変わってくる。自分の力で会社を変えてやる、自分の力で勝負したい!と考える人には、向いているのではないでしょうか。

 学生の頃の私はリスクを嫌い、失敗を恐れる傾向が強くありました。
 しかし今思えば、自分では解決出来ないような問題に発展するほどのリスクを負う事なんて学生時代にはまずなかったし、もし何かに失敗したとしても、真摯に向き合いさえすればどうにかなる。失敗したって「まぁ、いいじゃないか!」でいいと思うんです。

|全力×全力=自分の強み -私の経験談-
 若い頃は失敗を恐れず、バイトでも趣味でも何でもいいから全力で深く追求することが大切です。適当に浅くさらうだけではあまり身にならないと思います。深く掘り下げる事ではじめて気付く事がある。他の何かに転用出来るようにもなる。最後にはそれが自分の強みになって返ってきます。
 ここで私の経験を1つ紹介します。
 春日部校では、県の展示会に出品するための卒業制作が課せられ、何人かでグループを作って取り組みます。私たちのグループは「ハウルの動く城」を制作することにしたのですが、何しろあの出で立ちです。絵によってパーツの形や配置が違う。見る人によっては解釈も違う。具体的な作業は遅々として進みません。このままでは提出期限までに完成できないと思い、グループのメンバーに「一旦俺に仕切らせてくれ」と頼みました。その日からは、寝る時間以外のほとんどを「どうやって作るか」を考える事に費やしました。大きな責任を感じましたが、とても充実した日々でした。そんな中、辿り着いたのが「図面を描く事」と「役割を分担する事」です。
s-DSC_1443_4.jpg 図面を描いて寸法で示せば、全員が同じ完成イメージを共有できます。絵を眺めているだけではわからなかった事にも気付けます。同形状で少しずつ大きさの違うパーツが欲しい場合には、図面の寸法を少し変えてあげればすぐに意図も伝わります。「これよりちょっと大きいやつが欲しい」という言い方をしていたら、おそらく欲しいものは出来てこなかったでしょう。
 役割分担は事態を劇的に変化させました。「みんなが同じ」ではなく、人によって特徴があります。明確な寸法指示さえあれば黙々と大量のパーツを作れる人、図面では指示しきれない部分を豊かな想像力で作り上げる人、メンバーの特徴に合わせて作業を割り振る事で制作は速やかに進行し、無事に完成させることができました。
 ものづくりの現場では、図面で意図を伝える事が基本中の基本です。適正に応じて役割を分担する事も当然のこととして行われています。当時は目の前の作品を仕上げる事に必死になっていただけですが、そうして突き詰めた結果、最後には「ものづくりの基本」に辿り着いたのです。その経験は今でも、自分の強みとなって支えてくれています。

|読書のすすめ
 最後に私のお薦めの一冊を紹介します。
 それは「下町ロケット」(池井戸潤著)です。とても有名な作品の為、ご存じの方も多いかと思います。
舞台となるのは、とある中小企業。日本の企業は大多数が中小企業ですから、多くの人にとってそれは他人事ではありません。
 物語は、そんな中小企業の熱い息吹やものづくりへの執念を軸に、技術的な問題、法律的な問題、時には人の複雑な感情も絡め、ダイナミックに展開します。
「仕事に関する本は読みたいけれど、ビジネス書には手が伸びない。」そんな方には特にお薦めの一冊です。