社会変化が激しい時代に女性が結婚、出産、育児でキャリア(仕事)から離れたら、もう通用しないのではないか?と不安に思う人が多いのですが、本当にそうでしょうか?

 私は30年以上前に銀行の窓口で仕事をしていました。
 今の銀行業務はまったく違っていることでしょう。ただ、御客さまのニーズを考えて事務処理をどうやったら正確に早く出来るかを考え練習をしました。結果、余裕を持って接遇やセールスが出来るようになったのです。
 お客様との触れあう時間が多ければ多いほど相互信頼が生まれ、お客様の要求や様子は更にわかるようになるという好循環が生まれ、面白さとやりがいを知りました。

 私も結婚出産を機に仕事を離れましたが、30年過ぎた今でも、いえ30年過ぎたからこそ、あの当時の仕事が今でも十分役にたっていると実感出来るのです。
 キャリアのなかで中断している時間に起きた出産も育児も家事もすべてが次のキャリアに形は違っても繋がります。
 大学の教員と銀行の窓口業務には表面的には共通性はありません。しかし、常に「今求められていることは何か」「それをどうやったら提供できるのか?」と自問自答する姿勢は30年前に出来たものです。

 10年前の社会では、キャリアは積み重ねるものと考えられていましたが、こんなに社会変化の激しく早い時代では、積み重ねていても、それが通用しなくなったりすることは増えてくるでしょう。

 それよりも、ピーター・ドラッカーは、多様な経験、学習で違ったキャリアになっていく「パラレルキャリア」を提唱しました。ひとつの職業だけに囚われず、非営利な活動もキャリアであると。
 まさに家庭での母親の仕事は非営利な活動のひとつではないでしょうか?それが社会性・営利性が少なくとも、そこで培ったすべての経験は、また新たな場面で役に立ちます。

 しかし、この「役に立つためには」、役立てるのだという意識と考えを持つことが必要です。結婚で退職をしても、継続的に働いても、どちらにしてもあなたの仕事は、将来、形が変わって、見え方が変わっても役に立ちます。
 どうぞ中断という考えから、繋がっているという意識に変えてください。