子どもを持つ保護者の方へ 一覧

 前回、キャリア教育の定義を説明させて頂きました。

 この背景には雇用環境の変化、学校を出てもすべての子ども達が就職をすることが出来ていないという現実もあります。
 また、社会変化のスピードが速く、激しいために、今まであった企業や産業が消失することも起きているので、社会の変化に対応できるキャリア意識(自立)も必要であるということがあると考えられます。

 そして、文部科学省では、キャリア形成に必要な能力として以下の4つを出しています。

 これは、単に会社に入社するための能力ではなく、主体的に意思決定(自分で決める)ことを前提にされています。

 家庭教育において、指示・命令・決めつけを出来るだけ少なくし、自分で考えること。
自分で決めること。自分で責任を持つことを日常生活の中で意識してください。

 親が指示することは、簡単です。
しかし、それでは自分の発想を生んだり、自分で責任を持つ機会を持てないということになります。

1. 人間関係能力:他者の個性を尊重し、自己の個性を発揮しながら、様々な人々と
           コミュニケーションを図り、協力・共同してものごとに取り組む能
           力。
2. 情報活用能力:学ぶこと・働くことの意義や役割及びその多様性を理解し、幅広く
           情報を活用して、自己の進路や生き方の選択に生かす能力。
3. 将来設計能力:夢や希望を持って将来の生き方や生活を考え、社会の現実を踏ま
           えながら、前向きに自己の将来を設計する能力。
4. 意志決定能力:自らの意志と責任でよりよい選択・決定を行うとともに、その過程で
           の課題や葛藤に積極的に取り組み克服する能力。

 高校でも、今後キャリア教育の義務化というニュースが新聞の一面に出ました。
親世代にはこのような教育はありませんでした。「進路指導、道徳教育とは違うのでしょうか?」という質問を多くいただきますので、改めて文部科学省が提言している「キャリア教育」を説明してみます。

 キャリア教育の定義は、文部科学省のHPで閲覧できます。
 私が一番重要と考えることは、「個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くこととの関係付けや価値付けの累積」という表現です。

 この意味を文部科学省では、簡単に言えば、「子どものときは、家の手伝いをしたり、学校での様々な役割があります。また、就職したり、結婚することによってまた新たな役割が生じます。さらに、地域社会とつながる中で、様々な役割を果たしていかなければなりません。
 すなわち、人は生まれてから死ぬまで様々な役割や立場を担いながら生活していくということです。」と伝えてます。

 ということは、家庭でも様々な役割を明確にして子どもの成長のために、体験を積むことを意識するということです。

 また、「『児童生徒一人一人の勤労観、職業観を育てる教育』としてキャリア教育は、学校の全ての教育活動を通して推進する。各小・中・高等学校において活動相互の関連性や系統性に留意しながら、発達段階に応じた創意工夫ある教育活動を展開していくことが必要。」とも表現しています。

 一口に職業観といっても、働いたことのない子どもが身に着けることは難しいのですが、世の中の仕事を家庭で話すことや、親自身の職業観を子どもに伝えることもキャリア教育といえます。

 キャリア教育という言葉が公文書で初めて使用されたのは、1999年の中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」です。
 この答申の中で「学校と社会及び学校間の円滑な接続を図るためのキャリア教育(望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身につけさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育)を小学校段階から発達段階に応じて実施する必要がある」と述べられています。

 さらに2006年11月の文科省内協力者会議作成による「小学校・中学校・高等学校キャリア教育推進の手引」において、キャリア教育において身につけさせる力として以下の内容構造案を示しています。

(1)人間関係形成能力(自他の理解能力とコミュニケーション能力)
(2)情報活用能力(情報収集・探索能力と職業理解能力)
(3)将来設計能力(役割把握・認識能力と計画実行能力)
(4)意志決定能力(選択能力と課題解決能力)

 以上の内容は具体的に、
(1)他者の個性を尊重し、自己の個性を発揮しながら、様々な人々とコミュニケーションを図り、協力・共同して物事に取り組む力を育成すること。
(2)学ぶこと・働くことの意義や役割およびその多様性を理解し、幅広く情報を活用して、自己の進路や生き方の選択に生かす力を育成すること。
(3)夢や希望を持って将来の生き方や生活を考え、社会の現実を踏まえながら、前向きに自己の将来を設計する力を育成すること。
(4)自らの意志と責任でよりよい選択・決定を行うとともに、その過程での課題や葛藤に積極的に取り組む力を育成すること。
と具体例を挙げています。

 難しい表現ですが、自分で考えて、自分で表現する。しかしそれは仲間や社会と一緒であり、協調することです。これは、学校生活だけでなく、家庭生活の中でも出来ることです。
 例えば「それは具体的にどんなこと?」と聞いてみること。「自分ではどう言ってみたいの?」「他にはある?」というように親や他者が「尋ねる」ことを積極的にすることが「自立的な考え」の芽になります。

 キャリア教育とは特別の教育ではなく、将来への基盤を意識して行動を促進することではないでしょうか?

 様々な企業の方から「魅力的な学生像」というものを伺います。
色々の表現の仕方はありますが、業界や職種が違っていてもどうやら基本のところでは同じように思います。

 それは、「前向き」「一生懸命」「素直」ということではないでしょうか。
 実は、この当たり前のことを置き去りにして「就職活動のノウハウ」に走る学生が就活迷路に入っていきます。

 就活迷路の中で「これから伸びる企業は?」「安定している」「福利厚生がきちんとしている」というある種の条件や表面的なブランドを追っかけてしまうのです。
これを追いかけると企業側としては、あなたがこの会社で貢献してくれることは?と学生と会社の話が微妙に噛み合わなくなるのです。

 学生が就職活動を始める時には、まず社会・企業に対して素直に好奇心を持ち、前向きな姿勢で、目先のこと、損得よりもまずは、やらなければならないことをやるという一生懸命な姿勢を持つことからスタートしてもらいたいのです。

 そのために親が出来ることは、子どもの成長過程でがんばったこと、一生懸命に取り組んだこと、前向きになったことを思い出して、問わず語りに「あの時の頑張りは凄かったね」「言われずにも自分からコツコツやったね」などと我が子の気持ちを前向きにする支援です。

 就職活動はどうしても気持ちが後ろ向きになりがちだからこそ、親が素直に前向きになることが一番の応援です。
 また、就職活動が饒舌な会話や表面的な明るさ等で決まる訳ではないことも伝えてあげてください。もっと見えない「意欲」を探るのが企業人事です。

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彩の国はたらく情報館
  キャリアレッスンについて


東洋大学 准教授であり、カリスマキャリアカウンセラーである小島貴子(こじま たかこ)先生による、就職活動中の学生の方、子どもを持つ保護者の方、転職を検討中の社会人の方へのメッセージを掲載しています。