彼女とは、どうやって知り合ったんだろう。
最後にデートしたときのことを少し覚えている。僕たちは上野の国立博物館へ行った。帰りの駅は人混みで、彼女は僕を見失わないようにジャケットのすそにつかまってた。
それで、彼女は僕を見失わなかったんだろうか。見失わなせないだけの思いやりも持てないくらい僕は幼かったし、すそにつかまったつながりすら、街の中では賞賛すべき偶然であることを解らないくらいに二人とも幼かった。
その何日か後に、上野公園は別れの場処であると彼女は手紙に書いてきた。
僕は歌をつくって、彼女に贈った。
そして、歌につづられたことを実現すべく、僕は小さなコンサートを開いた。
もう一度君に会いたくて、おくる招待券・・・冬のコンサート
コンサートが始まってすぐ、彼女は扉を開けて入ってきた。そして、カウンターの隅に座った。コンサートの途中も、彼女はあまりこっちを見ることはなかった。
そして、コンサートの最後に僕はその歌を歌って・・・、
歌が終わる直前に、彼女は出て行った。
コンサートの様子を撮っていたカメラマンも彼女のことを撮っていなかった。
そして、置手紙ひとつ。
そんな、冬の思い出だ。
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